治療では治療上必要な可能性がある。圧出性はマイボーム腺の機能と同一の場合があり、両者は密接に関係しているようであるが、圧出は分泌の代用測定物と考えられるものの、それ自体は分泌機能を測定するものではない。
MGD では、圧出された油の質は、濁った液体、粒子性物質を含む粘性のある液体、緻密で不透明な練り歯磨き状物質等で外観上異なる。このような特質は種々のオリ ジナルの分類方法に組み込まれている 75, 96, 97 ( Table 5 )。このような 4 ポイントシステムのスコアは、 0 が透明(正常)、 1 が濁り、 2 が粒子を伴う濁り、 3 が濃厚(練り歯磨き状)である 75 。同様に、 Mathers 法では、 1 が透明、 2 と 3 が液体であるが透明度が下がり、 4 は練り歯磨き状である。一定数の腺を圧出して評価すると、スコアを算出する 2 つの方法がある。 1 つの方法は、圧出した腺から得られた最も高い点数だけを記録する方法である。この場合、単一の領域では、スコアの範囲は 0 から 3 である。もう一つは、圧出される各腺に関してスコアの合計を記録する方法である。 8 つの腺を圧出すると、スコアの幅は 0 - (8 × 3) = 24 となる。この方法は一般的に好まれ、本委員会で推奨されている。しかし、若干注意が必要なのは、長期的研究では、正常な眼瞼でも起こり得る非圧出性が、全 閉塞のサインでもあり得る点である。疾患の進行に伴う病理学的な非圧出性腺の数の増加は、逆説的であるが、合計スコアの低下につながるであろう。
さらに、指による圧出を行なった腺の圧出性が分類されており 55, 87, 98 、一方で、標準化した力をかけている間の単一または複数の腺からの圧出性が Korb と Blackie によって測定されている( Table 5 ) 49, 50, 81 。特別に設計した装置を複数の腺に用いて、標準化した力を 10 ~ 15 秒間かけている 52 。 Shimazaki 法では、指によってもたらされる異なるレベルの圧力に対する反応に従って圧出性を分類し、その結果、分類過程にさらに客観的な要素を加えている。 Pflugfelder の方法と Korb の方法は、圧出された腺の固定した数に関係し、後の方法は検査実施者に対して、液状の分泌物を産出する腺だけを、その質にかかわらず点数化する( MGYLS スコア)ように指示している( Table 5 )。スケール範囲を拡大させ、上下の眼瞼の全長の状態を反映するために、総計スコアは、各眼瞼の鼻側、中央、耳側がわからの圧出分類の合計から算出でき る。前述のように、若年正常者でさえも、圧出性は、液状のマイバムを圧出可能な腺の割合の点で、眼瞼の領域間で異なり、鼻側から耳側がわへ徐々に低下する 49, 50 。しかし、各眼瞼から鼻側がわと中央のスコアを合計し、耳側がわのスコアをとろうとしないことで、上下の眼瞼に関して、複合スコアを得ることが合理的であ る可能性がある。
形態的眼瞼変化の分類:分類スケール MGD の他の形態的特徴を分類する方法(付録 5 )についてはこれまで議論されており、 Table 2 に示している。分類スケールは、それぞれの眼瞼を 4 つの領域に分けて各領域の変化の最高レベルを分類することで拡大される可能性がある 75 。このようにして、選ばれた特徴を定量化することで、 MGD の総合的スコアが得られる可能性が生じ、この総合スコアは、腺の圧出性と脱落の測定と関連して使用することが可能である 1 。この方法は、 Paiva らにより、正常者と眼刺激を有する被験者を比較する際に採用された 106 。 0 から 11 の幅のスケールからなる総合的スコアは、マイボグラフィーによる分類( Table 2 参照)と以下のような眼瞼変化の分類を組み合わせて算出された。すなわち、開口部については、形成異常が存在する場合は 1 、存在しない場合は 0 とし、ブラッシュマーク(直線状の血管の特徴)については、存在する場合 1 、存在しない場合 0 とし、指で圧力を下眼瞼の 5 つの腺にかけた際の圧出性については、圧出可能な腺の数が、 5 本全ての場合 0 、 4 本の場合 1 、 3 本の場合 2 、 2 本の場合 3 、 0 本の場合 4 とした。同様に、 Arita らは、眼瞼の異常が存在するか否かについて点数化を以下のように行なっている。すなわち、眼瞼縁の不規則性、眼瞼縁血管充血、マイボーム腺開口部の閉塞、 MCJ の前方移動または後方移動に 0 から 4 のスコアをつける方法である。
C. 現在の分類スケールの利用
このような種々の検査は、 MGD の罹患率や眼疾患との関係を検討するために用いられている。年齢に関係するデータは、眼瞼の形態的変化、眼瞼縁の脂質レベル、マイボーム腺脱落、マイボーム腺分泌物の圧出性に関して健常人で入手可能である。
Mathers ら 43, 115 は、ドライアイのない健常人 72 例について検討するためにマイボグラフィーを用い、約 50 歳までは、腺の脱落が、平均して、評価した 8 腺中 1 腺以下であることを見いだした。その後、評価した 8 腺中約 2 腺( 25% )まで増加した。同様に、非接触マイボグラフィーを用いて、 Arita ら 3 は、マイボスコア(脱落を示す)と年齢の間に有意な正の相関を見いだした( R = 0.428; P < 0.0001 )。 Arita らは 50 歳の正常者ではマイボスコアのグレードがたかだか約 1 であり(すなわち、腺の全面積の 1/3 で腺が消失)、加齢に伴ってスコアと腺の脱落が上昇することを見いだした。
無症候性、健常人を対象とした研究で、 Hykin と Bron 116 は年齢に関係する変化を示しており、これには眼瞼縁末梢血管拡張と皮膚の角質化亢進の増加、マイボーム腺開口部の狭窄と突出(閉塞)の増加、および圧出可 能な腺の数の減少が含まれる。圧出される分泌物の質(粘度と透明度)は変化しなかった。対比的に、 Mathers と Lane 43 は、健常人では年齢と共に脂質の粘性は増加し、線形の傾きについて非常に有意な変化( P = 0.0006 )であることを見いだした。
Chew ら 5 は健常人の大規模なサンプル数( n = 421 )でマイボメトリーを用い、マイボーム腺脂の眼瞼縁レベルが生涯を通して増加し、ほぼ 50 歳を超えると性差がないことを見いだした。このようなマイボメトリーの結果は、年齢と共にマイバムが圧出される開口部の数が少なくなるという知見と一見矛 盾する 116 。この矛盾は、年齢と共に眼瞼縁からマイボーム腺の排出量が多くなることで説明可能である。
Yamaguchi ら 99 は、健常人の Marx's line の傾向を、フルオレセインと他の色素、および以下の分類法を用いて評価した。すなわち、 Marx's line がマイボーム腺開口部の結膜側全体に走っている場合を 0 、 Marx's line がマイボーム腺開口部に接触する場合を 1 、 Marx's line がマイボーム腺開口部を通して走っている場合を 2 、 Marx's line がマイボーム腺開口部の皮膚側の上にある場合を 3 とする。分類は、下眼瞼の内側、中央、外側の 1/3 で行なわれ、眼瞼全体についてのスコアの幅は 0 から 9 とした。分類は観察者間で当然一貫していることがわかった。年齢と共に、分類スコアは高くなっており、 Marx's line (および MCJ )が経時的に前方移動することが示唆されている。著者らは、領域のマイボグラフィースコアと圧出されたマイバムの質スコア( 0 から 4 を基本に分類)および領域の Marx's line スコアの間に正の相関があることを見いだした。
複数の研究者は(ここで議論されている種々の方法を用いて)加齢と共にマイボーム腺の機能が低下することを示している。 Norn 51 は、 20 歳の健常人では指で圧力をかけることにより最大約 14.5 本の下眼瞼腺を圧出可能であるが、 80 歳を超えるとこの数は約 7 本にまで減少することを見いだした。 Hykin と Bron 116 はこの結果を後に確認した。
Mathers ら 96, 97 は 20 歳以上の健常者では MGD の罹患率を 20% と報告している。他の研究では、 MGD の罹患率は 3.5 ~ 68% と報告されている。 Arita ら 109 は、 20 歳以降の男性および 30 歳以降の女性でマイボスコアが陽性になることを報告している。マイボスコアは男女共に年齢と相関し( R = 0.428, P < 0.001 )、さらに眼瞼縁スコア(クラスターの特徴に基づく)と年齢( R = 0.538, P < 0.0001 )、さらにマイボスコアと眼瞼縁スコア( R = -0.289, P = 0.0001 )も正の相関が認められた。
複数の研究者らは、マイボーム腺消失が閉塞性 MGD の有用な指標であると結論づけている 86, 87, 94, 96, 97 。マイボグラフィーを用いることで、 Mathers ら 96, 97 は慢性眼瞼炎患者の 76% にマイボーム腺脱落を認めた。健常者群の脱落スコアは 0.18 ± 0.1 (調査した 8 本の下眼瞼の腺当たり)で、眼瞼縁群では 1.97 ± 2.1 であり、これは眼瞼炎で MGD ではない状態の患者も含んでいたようである。クラスター分析に基づき、腺の脱落だけが、機能不全を分類する上で有用であると結論づけた。閉塞性 MGD は、正常者(平均 0.18 ± 0.1 腺が消失、~ 2.2 %)と比較し、高いレベルの脱落(調査した 8 本の腺のうち、平均 3.67 ± 1.7 腺が消失、約 50% )と関連していた。この研究では、高いレベルのマイボーム腺脱落、高いレベルの涙液浸透圧、高いシルマー試験値の患者群を特定した。この群は、 Bron ら 117 が、涙腺
の部分的、反射的な代償段階での蒸発亢進型ドライアイの患者の例として予想した群と十分に対応しているであろう。さらなる患者群が、高レベ ルのマイボーム腺脱落、高い涙液浸透圧、低いシルマー試験値を有する群として特定された。この群は、蒸発亢進型ドライアイがより進行した段階と対応し、涙 腺の代償性が不十分となり、蒸発亢進型ドライアイに機能性の涙液減少型のドライアイが伴うと予測される。この乾燥症群では、平均脱落数は 5.5 ± 1.3 腺( 8 腺中~ 69% )であり、脂漏性 MGD の被験者と低シルマー試験スコアのみの被験者では腺の脱落がさらに低いレベルであったこととは対照的であった。併せて考えると、このような結果から、腺脱 落の定量的評価は閉塞性 MGD の重要な指標であることが示唆される。
Pflugfelder ら 55 は臨床でマイボスコピーを用いて、サンプル数は少ないが(サブタイプ毎に n = 9 ~ 11 )、複数のドライアイサブタイプで腺の脱落を評価した。この著者らは、対照群ではグレードが 0.5 未満であったのに対して、炎症性および非炎症性 MGD 被験者では腺脱落の平均スコア(腺脱落のパーセンテージに基づき 0 ~ 3 のスケールで分類する)のグレードが約 2 であることを見いだした。この報告の重要な知見は、炎症性 MGD と萎縮性 MGD の腺房消失の程度がほぼ等しかったことである。したがって、腺脱落だけでは、このような 2 つの臨床症状を十分には鑑別できそうにない。 Khanal ら 118 は、腺脱落が、ドライアイのない者と蒸発亢進型ドライアイのサブタイプを識別する上で有効であるが、涙液減少型ドライアイを識別する上では有効でないこと を見出した。
Matsumoto ら 79 は、共焦点顕微鏡を用いて、 MGD 患者ではマイボーム腺密度が低下していることを示した( 47.6 ± 26.6/mm 2 に対し、対照群で 101.3 ± 33.8/mm 2 )。この群では、マイボーム腺の直径の測定も、腺の健康状態を反映する新たなパラメーターとして導入された( Fig. 16 )。この研究では、 MGD は、腺房内で蓄積して濃縮された残屑が起因となった残存腺の幅の増加( MGD で 98.2 ± 53.3 μm 、対照群で 41.6 ± 1.9 μm )と関連していた。しかし、腺房の拡大は、フィードバックループの影響によって、部分的に代償されているという別の説明も可能かもしれない。
最近の文献に関する本レビューでは、マイボーム腺脱落の定量化がマイボーム腺の完全性に関するベースラインの貴重な情報を与えることを示している。この脱落スコアは、他の診断基準によって診断された MGD の存在および眼表面の MGD の作用と相関するようである。
OSD を合併する MGD OSD は MGD に併発し、最も進行した状態は MKC でみられる。この障害には、炎症メディエイターの涙液層への放出、蒸発亢進型ドライアイのメカニズムなど種々の病因が提唱されている。このようなメディエ イターの出所の 1 つには、微生物共生物のリパーゼによって変化するマイ |